出版された本というのはある意味完成品なのだが、良かれと思い始めたサイン入り美術本、そのサイン入れが、なかなかなかなかの労力で、本という完成品にまた新たにアナログの「手」であり「筆」であり「サイン」を入れるという私らしい不合理な行為を続けている。
自分の名前を書き損じる事は無いにせよ、個人的な美観に耐えうるもの、耐えられないもの、所謂良し悪しが生じてしまうのは避けられない。
それが人の温もりの入った手作業、ロボットや機械による大量生産との違いである。
気に入らない物、それは即ちロス、一冊あたり5250円の損失となるから本当にスリリングだ。
サインのみならず捺印もしているのでダブル・スリリング&リスク、捺印失敗というのも無くは無い。
目には見えませんが、サイン入れ、捺印、梱包等も含め、柿沼事務所を通して売買された美術本全てに何十個もの私の指紋がへばり付いている(少し汚い表現ですが、、、)という事実、それは手作業上の芸術上の「味」という意味で何卒お許し願いたいと思っている。
サインが無ければ大量に生産されたプロダクトのワン・オブ・ゼム、サインが入った瞬間からある種の生命を受け、世界に一つしかないレア物と化するあたりにモノの価値や面白さがあるのかもしれない。
これもまた、私の作品の一つとして時や場所を超え、可愛がられ、時に憎まれ、本棚にしまわれ、忘れた頃にまた取り出され、いろいろな形で後世に残されていくものなのかと想像するとこれまた楽しいものだ。
限定2000部重版無しのこの美術本自体は、全国の書店や他社のWEBでも購入可能ですが、柿沼事務所のサイン入れは特別企画、恒久ではございませんもで。気になる方は一度だけ飲みに行くのを控え手元に置いて頂けましたら幸いです。
これまで本当にたくさんの方々にご購入頂きました。
心より感謝致しております!
PS.
直筆サインなのにどれがサインか分からなかったという意見が過去多々ありました。巻頭のサイン縦書き+印が私の手によるものです。(印刷じゃありませんので悪しからず!)
少し斑や完成度を下げてリリースしなければ分からないのかと少し悩んでいます。(苦笑!)
つづく
美術本「柿沼康二 書」関連リンク
美術本 その1
美術本 その2
美術本 その3
美術本 その4
美術本 その5
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