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author : スポンサードリンク| 2017.02.03 Friday | - | -
機関誌”Wa”6月号 柿沼康二エッセイ掲載
アーティスト・エッセイ
捕まえた奇跡が生む、新しい縁
柿沼康二(書家)
 
08年末、九州大学から新キャンパス入り口に銘板を作りたいので「九州大学」と書いてほしいというお話があった。しかしそれから最終決定するまでの数ヶ月間、九州に関わりのある文化人か、それとも九州にも九大にも縁もゆかりもない書家にするかで二転三転したとのことだ。決め手となったのは2007年NHK大河ドラマ「風林火山」の題字のインパクトとクオリティーの高さだったと、佐藤優教授から後日伺った。ドラマの内容より題字に魅了されるほど「大変な書家が出てきた」と圧倒された、アジアの中心的教育機関を目指すグローバリズムを提唱する九大と、国内外で活動する私のイメージが重なり合ったということだった。
「書家は自分の持つ筆、書く文字に3500年の書の歴史が宿ってなければならない」と三人の師によって徹底的に訓練された私は、徹底した古典臨書(歴史的古筆の模倣)を通して、今日に生き未来に伝承される現代書をこれまで探求してきた。切ったら血の出るような書線、山や海の如く絶対的な生命力を持った自然感を追い求める一方で、書とは何か芸術とは何か、書は芸術たり得るかと問い続け、2006年から1年間の米国プリンストン大学客員書家を始め国外でも積極的に活動を行い、世界に通用するアートとしての書も模索している。
「風林火山」の題字揮毫の話は母の50日法要の翌日に決まった。とても筆を執る気になれなかったが天の母の導きと信じ、母の鎮魂を願いながら全身全霊を込めて仕上げたものだ。母の力を借り自分の能力を完全に越えてできあがった、奇跡的記念碑的作品ともいえる。
 「九州大学」を揮毫しそれが銘板に刻されるということは、九大のこれまでの長い歴史及び少なくとも百年先の未来まで見据えること、そして自分の命より長くこの世に残るもう一つの命を生み出すことを意味していた。これほど自分の能力を試される舞台はない。一気にボルテージが上がった。歴史上の能筆家の墨跡を徹底的に検証しイメージを膨らませきった後、いよいよその四文字に筆を執った。筆と線の角度、圧度、速度を調整し、一点一画どこもかしこも有機的に繋ぎ合わせ、上品でアヴァンギャルドな唯一無二の塊を追い求め、また書の原則やテクニックを掛け合わせ、独自の黄金率と方程式を導き出してゆく。
「一秒前の自分を殺していく」行為、それが私の書道哲学である。極限まで自分を追い込み執拗に繰り返し書き込んでいく行為の裏で、刹那に顔を見せる「奇跡」を捕まえるのだ。限界を感じては書に命を捧げた亡き師匠と交信し自分を奮い起こし続けた。制作枚数は四百枚を超え、一切の余力も矛盾も目的も拘りも消え去り、放心状態となっても更に書き続けた。こうして生み出した「九州大学」は、数ヵ月後「九州大学病院」揮毫へと連鎖した。
命を込めた私の作品が私と九州との縁をとうとう作り出してくれた。
 
http://www.ffac.or.jp/magazine/back_number/archive__file/WA46e/_SWF_Window.html?mode=1062
author : 柿沼康二| 2010.06.23 Wednesday 18:51 | - | trackbacks(0)
柿沼康二
書家、アーティスト
Koji Kakinuma (c)Douglas Benedict
(c)Douglas Benedict
書家/アーティスト・柿沼康二の芸術観、書道について、アーティスト論、過去の日記などを集めたエッセー集。

柿沼康二(カキヌマコウジ)。書家・書道家・現代美術家。 1970年栃木県矢板市生まれ。5歳より筆を持ち、柿沼翠流(父)、手島右卿(昭和の三筆)、上松一條に師事。東京学芸大学教育学部芸術科(書道)卒業。2006-2007年、米国プリンストン大学客員書家を務める。 「書はアートたるか、己はアーティストたるか」の命題に挑戦し続け、伝統的な書の技術と前衛的な精神による独自のスタイルは、「書を現代アートまで昇華させた」と国内外で高い評価を得る。2013年、現代美術館において存命書家史上初の快挙となる個展を金沢21世紀美術館にて開催。2012年春の東久邇宮文化褒賞、第1回矢板市市民栄誉賞、第4回手島右卿賞。独立書展特選、独立書人団50周年記念賞(大作賞)、毎日書道展毎日賞(2回)等受賞歴多数。NHK大河ドラマ「風林火山」(2007)、北野武監督映画「アキレスと亀」、角川映画「最後の忠臣蔵」等の題字の他、「九州大学」「九州大学病院」名盤用作品等を揮毫。 NHK「トップランナー」「趣味Do楽 柿沼康二 オレ流 書の冒険」「ようこそ先輩課外授業」「スタジオパークからこんにちは(2回)、MBS「情熱大陸」、日テレ「心ゆさぶれ! 先輩ROCK YOU」、BOSE社TV-CM等に出演。 伝統書から特大筆によるダイナミックな超大作、トランスワークと称される新表現まで、そのパフォーマンス性は幅広く、これまでNYメトロポリタン美術館、ワシントンDCケネディセンター、フィラデルフィア美術館、ロンドン・カウンティーホール、KODO(鼓童)アースセレブレーションなど世界各地で披露され好評を博す。現在、柿沼事務所代表取締役社長兼所属書家。


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