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author : スポンサードリンク| 2017.02.03 Friday | - | -
高知新聞3月1日付 手島右卿賞受賞関連記事


 (1面)右卿賞に柿沼康二さん


高知新聞社と手島右卿顕彰会(小池唯夫会長)が主催する「手島右卿賞」の選考委員会は28日、本年(第4回)の受賞者、受賞作に栃木県生まれで東京都在住の書家、柿沼康二さん(38)とその作品「風神雷神」を選んだ。
同賞は、<書>を世界的な芸術にまで高め、昭和62年に逝去した安芸市出身の故・手島右卿の業績を顕彰するため平成18年に設けられ、共同通信社が共催している。書を中心とする芸術分野で優れた創作活動を続ける将来性豊かな60歳までの作家とその作品を表彰するもので、今回は平成20年の1年間が対象。
同賞選考委員会は、個展や雑誌の表紙などにも現代的でシャープな作品を発表し国際的な活躍を続ける柿沼さんの作品群と書のパフォーマンスにも注目。伝統的な書の精神と感性豊かな造形性が前衛的な世界と見事に融合していると評価、授賞を決めた。柿沼さんは「これを機に世界に通用する作品を目指したい」と喜んでいる。
表彰式は右卿の命日の3月27日に高知新聞社で行い、受賞記念の「柿沼康二作品展」は3月27日から4月1日まで高知市の高新画廊で。入場無料。



(18面)
手島右卿賞 選考過程


書壇関係者の間で話題となっている「手島右卿賞」。第4回の今回は「将来性豊かな若手」か、「ベテランの安定した力量」か・・・などを焦点に選考委員会では白熱した議論が展開された。一時は、受賞見送りも考えられたが、賞の原点にまで立ち戻って真剣な討議を続行。最後は委員全員が一致して若い柿沼康二さんへの授賞が決まった。


東京・丸の内、東京會舘で開かれた選考委員会。冒頭、右卿顕彰会の小池唯夫会長(前パシフィック野球連盟会長、元日本新聞協会長)と副会長の藤戸謙吾高知新聞社長が「この賞の評価は年ごとに高くなっている」「より一層の発展のためにも素晴らしい作家の作品を選んで生きたい」とあいさつ。
新しく選考委員に加わった日本を代表するアートディレクター、浅葉克己氏らが紹介された後、細田正和共同通信社文化部長を選考委員会主査に選出。右卿の長男で同顕彰会副会長でもある書家・手島泰六、美術評論家の武田厚、詩人の加藤郁乎の各氏(京都現代美術館の梶川芳友館長は文書で回答)が、細田主査の司会で選考を開始した。
まず、顕彰会の山野光男専務理事、石渡光一、小松康夫の両常務理事、池添正、野口幸雄の二理事や事務局が候補作家として用意した資料類、作品などを参照しながら第一次の絞り込み作業に。「名前だけが売れすぎて実力的には疑問がある」などの著名な書家らは落選し、結局、東京、ニューヨークなどを拠点に国際的で多彩な活躍を続ける柿沼康二さん、NHK連続ドラマ「篤姫」の題字を担当した菊池錦子さん、みずみずしい感性がにじむ土橋靖子さんらの若手が候補に浮上。新書派協会の土井汲泉さんらのベテランや若山象風さん、小澤蘭雪さんや、梶川委員推薦の前衛的な仕事を発表するMAYA・MAXさんも候補に残った。
最後の絞り込みの段階。細田委員が強く推す柿沼作品が最有力となったところで、議論はにわかに白熱・・・。
柿沼作品は「受賞に値する」ということでは全員が一致したのだが「それにしても若すぎる」「賞は来年でも遅くない」「仕事が多様、多彩すぎて本質が見えにくい」などの意見も登場し「もっと作品世界を絞る必要がある」。そして、「柿沼受賞で”独立書人団”の書家が続く」として「今回は見送り来年以降でもいいのではないか」との指摘もあり、「同じ”独立系”で賞に値する重鎮もいる」との声も出た。
選考は暗礁に乗り上げた格好だったが、最終的に右卿賞は「60歳」までの「将来性」豊かな<作家>の昨年「一年間」の活躍などに対して贈られる”書壇の芥川賞”だという原則論が浮上。「右卿さんが目指した世界的な芸術を模索している」「若すぎるということが賞の障害にはならないし、賞に値する作家だと全ての委員が認めている」として結局、全員一致で柿沼さんとその作品「風神雷神」を第4回の右卿賞に選んだ。


受賞の柿沼康二さん(38) 無限に続くもの 純粋に


受賞の知らせが届いたとき、書家、故・上松一條さんの家で”遺作展”の準備をしていたという。
「若い自分には無関係な”賞”だと思っていたんで、本当にうれしい。まさに、奇跡的なお話です・・・」
東京、大田区馬込の仕事場。あの独特な墨の香りが漂う中でしみじみと喜びを口にするが、その髪はなんとも不思議な金髪だ。米国にも拠点を置き、ニューヨークなどで精力的に披露する「書のパフォーマンス」を意識した”装い”なのかもしれない。
昭和45年栃木県矢板市生まれ。体育教師だった父は「柿沼翠流」という雅号を持つ書家で、右卿のお弟子さんだった。その影響で5歳から筆を持ち何の疑問もなく書を開始する。高校時代は書のほかに、サッカーやバンド活動にも余念がなかったが、高校一年の体育の日、父に連れられて鎌倉市雪ノ下の右卿の家を訪問。あの気難し屋の右卿が「チビ、よう来たな、ま、上がれ」と歓待してくれ、「今度何か書いて持って来い」。
すっかりその気になって毎月一回鎌倉に通い、血のにじむような修練を通して真実の書に迫るという”基本姿勢”を右卿からしっかりと学ぶ。東京学芸大学教育学部芸術科(書道)に進学。右卿没後はその同志でもあった上松一條に師事し、素質が大きく開花。独立書人団に所属し独立書展、毎日書道展ほかでの数々の受賞歴がその実力と人気を物語る。現在は、独立書人団審査会員で、「柿沼事務所代表取締役社長兼所属アーティスト」の肩書もある書家だが、
「書はアートたりうるか、己自身はアーティストたりうるか」
という命題に挑戦。弟子を取って生活を支えたり、教職に就いて作品を発表する・・・などの一般的な書家の生活を捨て、書の奥深い精神性を自身のものにするために毎日最低5,6時間、飽きることなく「”飯”を食うように臨書する」という。
古典的な書の骨格と現代性が融合した作品の発表から、特大の筆を駆使してダイナミックで前衛的な世界を表現する「エターナルナウ」、同じ言葉を呪文のように書き連ねる「トランスワーク」と称される新表現などまで、その活動の幅は本当に幅広い。
ニューヨークメトロポリタン美術館、プリンストン大学ほかでさまざまなパフォーマンスを披露。TBS「情熱大陸」NHK「トップランナー」「課外授業ようこそ先輩」ほかのテレビ番組に出演。NHKの大河ドラマ「風林火山」のタイトルのほか、北野武監督の映画「アキレスと亀」(第65回ベネチア国際映画祭白い杖賞受賞)の題字なども担当し、多彩で華やかな活躍が注目されている。
伝統的な<書>の骨格を殊のほか重視する一方で実験的な芸術活動に精力的に取り組み、革新的な芸術を志向する。そんな”孤高”の姿勢が「書の概念、範疇を超え、現代アートにまで昇華させた」と国内外で評判だが、
「その折々に体の中から出てくる”無限”に続くものを純粋に表現したい」
「”純粋”という言葉に私自身をどこまで近づけてゆくか。そのためにも一生懸命”瞬間”を生きて、もっともっとがむしゃらに書き続けたい」
そして、今回の受賞を機に「たとえその時代の流れと異なるとしても、恐れることなく前進して自分の世界を表現して・・・ニューヨーク近代美術館にも収蔵されるような作品をつくりたい」。
気負いなく淡々と語る表情には”新しい芸術”を模索する求道者的な風格すら漂う。



(19面)柿沼康二の現代性と国際性−細田正和
本当に生きるとは・・・

個人的な2つのエピソードから本稿を書き起こします。
その第一は、2007年新春のことでした。東京・神保町の書店に貼られたポスターには、オレンジの地に毛筆で、こう書かれていました。
「なぜ 生まれてきたの」
中央公論社が創業120周年を記念し、社を挙げて取り組んだ「哲学の歴史」全12巻の刊行スタートを、高らかに告げるポスターでした。学生時代、哲学科の片隅に席を置き、カントやフォイエルバッハの原書に挑んでは惨敗を繰り返していた自分の「原点」を、30年ぶりに問い直される強烈な体験でした。
2つ目のエピソードは昨年秋、東京・京橋の映画試写室でのものです。世界的に著名な北野武監督の新作「アキレスと亀」が、イタリアのベネチア国際映画祭に出品されることになり、通信社の文化面エディターの仕事として、事前の試写に望みました。
北野監督の代表作の一本となるであろう同作は、冒頭のアニメーションから本編に移行する瞬間に、ダイナミックな毛筆でタイトルが出現しました。その迫力が、映画の成功の最初の起爆剤となっているのは明らかでした。
言うまでもなく、ともに柿沼康二氏の作品です。しかし、このときの私はそれを知りません。そしてその後も、本賞選考が本格化するまでは、柿沼氏のプロフィルはもとより、誰を師と仰ぎ、どの団体の会員であるのかといったことさえ、私の関心の中心ではありませんでした。氏の作品そのものが発する「本当に生きるということはどういうことか?」という問いだけが、重要だったのです。
それから少し時間が流れ、本賞選考のため多くの書家のお仕事を調べながら、手島右卿賞の本旨とは何か?と何度も自問しました。その結果、趣意書がうたう「現代美術としての真に新しい書」「世界的な芸術を志向する創造性」、そして「文壇でいう芥川賞のような色彩」−この3点に尽きると考えるに至りました。
すなわち、現代性、国際性、最前線の文学賞に拮抗する前衛性。これが柿沼氏を本賞に推薦する理由でもありました。対象作品は、昨年2月に米国ワシントンDCで開催された日本特集フェスティバルにおける書のパフォーマンスと、その図録における斬新な表現。さらに、みずほ総研情報誌「Fole」の表紙における「風神」「雷神」「心」などの作品群、そして上記「アキレスと亀」への揮毫−であり、その現代性・国際性・前衛性は、傑出したものであると認識しています。
もし芥川賞の本義が「人間が本当に生きるとはどういうことかを、現代の最前線で追及する文学」にあるとするならば、書において同様のテーマを追求する柿沼氏への贈賞は、書壇における芥川賞たらんとする手島右卿賞にとって、誠にふさわしいものであろうと考える次第です。
現代の日本には、生きる実感をもてない若者や、不況下で自己喪失感に苦しむ人が増えています。伝統をふまえた厳しい修練を自己に課しながら、高い精神性と孤高の姿勢から生まれる柿沼芸術こそが、不安で陰鬱な時代の病を救済できるのではないかと考えるのは、ひとり私だけではないと革新しています。(共同通信文化部長・さいたま市見沼区在住)


(記事:高知新聞社提供。新聞掲載画像は公式HP内にあります)

author : kakiwebmaster| 2009.03.11 Wednesday 14:01 | - | trackbacks(0)
筆の芸術 − THE ART OF THE BRUSH (原文)
 (英訳されたエッセーはJapan’s Official Tourism(JNTO) websiteにございます。こちらも併せてご覧ください。) 

ART OF THE BRUSH http://japantravelinfo.com/modernart/m_brush.php


筆の芸術




私にとって書とは筆の芸術だ。だから文房四宝(筆、硯、墨、紙)の中で一つ選べと言うならば迷い無く「筆」と答える。そして書家にとって筆は侍の刀のようなものであり、作家の魂そのものといえる。

「書の醍醐味は臨書にある」師・手島右卿(昭和の三筆の一人)は言い残した。
臨書とは古典法帖を徹底的に模写していく作業のことで、書家にとって「息を吸う」ように基本を吸収する作業である。
臨書によって形象的理解から始まり、執筆や用筆法、運動性や呼吸等の応用へ発展させ、最終的には書き手の心理や生命力に迫るべく気の遠くなるような時間と強靭な精神力によって理解し身体に染み込ませる。
それは禅の修行にも似た作業であり、臨書というベースがあってはじめて唯一無二のオリジナル作品が己から「吐き出される」のだ。
それ無しでは、伝達記号である文字は書けても書き手の精神性や芸術的意味合いを伴った「書」にはならない。
 
私は毎日平均5時間の臨書をする。引く、突く、弾く、捻れ、開く、吊る、えぐる、名筆の中には無限の素晴らしい技術や表現が存在する。
臨書においてそれらを漏れなく表現したいと希求し続ける、即ちそれは表現への拘りに他ならない。
飽くなき臨書への取り組みにより腕も美観も日々進化し、それに比例して筆という相棒への要求も日々変化していく。

馬毛から羊毛(中国のヤギの毛)、サイズも千差万別、1000円のものから数百万円もする特大の特注筆まで、これまで1000本近い筆を購入してきた。
「僕は既にたくさん筆を持っているけど、懲りずにまた筆を買うのは、これまで以上に良い作品を書くためなんだ。書家が筆を買わなくなったら書家としての魂はそこまでお仕舞いということだよ」。
私と同じく書家である父が昔からこう語っていたのを思い出す。
穂の長さや筆の太さが1ミリでも違っても、その微妙な、わずかな違いは私にとっては決定的な違いとなる。
だから今気にいっている筆より良い筆は無いか、無ければ新たに開発できないものかと、筆屋に会う度に私は細かい注文をつける。書家の人生とは「筆探しの旅」なのかもしれない。

日本の筆の80%の筆は広島県熊野町という小さな町で作られている。
その例に漏れず私の相棒も熊野生まれだ。
この気難しい書家に付き合っていけるよう細微な調整がこれまでに何度も加えられている。

毎晩筆を持ち、熊野の筆の匠が作り出した相棒と語り合う。「次は何処にどういうふうに行こうか。お願いだがら付いてきてよ」と。


 
リンク
熊野筆 http://www.fude.or.jp/
author : kakiwebmaster| 2009.03.04 Wednesday 23:42 | - | trackbacks(0)
柿沼康二
書家、アーティスト
Koji Kakinuma (c)Douglas Benedict
(c)Douglas Benedict
書家/アーティスト・柿沼康二の芸術観、書道について、アーティスト論、過去の日記などを集めたエッセー集。

柿沼康二(カキヌマコウジ)。書家・書道家・現代美術家。 1970年栃木県矢板市生まれ。5歳より筆を持ち、柿沼翠流(父)、手島右卿(昭和の三筆)、上松一條に師事。東京学芸大学教育学部芸術科(書道)卒業。2006-2007年、米国プリンストン大学客員書家を務める。 「書はアートたるか、己はアーティストたるか」の命題に挑戦し続け、伝統的な書の技術と前衛的な精神による独自のスタイルは、「書を現代アートまで昇華させた」と国内外で高い評価を得る。2013年、現代美術館において存命書家史上初の快挙となる個展を金沢21世紀美術館にて開催。2012年春の東久邇宮文化褒賞、第1回矢板市市民栄誉賞、第4回手島右卿賞。独立書展特選、独立書人団50周年記念賞(大作賞)、毎日書道展毎日賞(2回)等受賞歴多数。NHK大河ドラマ「風林火山」(2007)、北野武監督映画「アキレスと亀」、角川映画「最後の忠臣蔵」等の題字の他、「九州大学」「九州大学病院」名盤用作品等を揮毫。 NHK「トップランナー」「趣味Do楽 柿沼康二 オレ流 書の冒険」「ようこそ先輩課外授業」「スタジオパークからこんにちは(2回)、MBS「情熱大陸」、日テレ「心ゆさぶれ! 先輩ROCK YOU」、BOSE社TV-CM等に出演。 伝統書から特大筆によるダイナミックな超大作、トランスワークと称される新表現まで、そのパフォーマンス性は幅広く、これまでNYメトロポリタン美術館、ワシントンDCケネディセンター、フィラデルフィア美術館、ロンドン・カウンティーホール、KODO(鼓童)アースセレブレーションなど世界各地で披露され好評を博す。現在、柿沼事務所代表取締役社長兼所属書家。


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