柿沼康二 書の世界−文字の超越
「生」(縦95×横76.5cm)
大地から草木がいきいきと生長する姿を現した「生」の古代文字。たった五画、重ねてシンメトリーという作家にとって何とも難しい造形と、生命力に溢れた単なる文字を超越するドラマ性を、いかに一回性の中で過不足なく自然に文字に織り込めるか。それが単なる線で書かれた字ではない「書」、「切ったら血の出るような書線」を描くプロフェショナルな書家の創り出す作品である。
一度制作を終えたものの納得いかず再挑戦、制作枚数200枚強。「動いているのに停止している」「作品が生き物のように見えたら矛盾が無い」と仰った亡き師の言葉を拠りどころとし、今回は筆を置く事とする。