書道の作品集というと言えば個展やグループ展などの開催時に個人的に製本された図
録が大半、
書店にある書道関係の本は、ほとんどが趣味の書道、ハウツゥー本、口と
言葉で書道をしているレッスンプロのガイドブックやエッセー集程度。
今回の美術本出版においても、私はその「常識」とやらを打ち砕く。
オールカラーだと高額になってしまうこと、作品だけでは説明が無いから勉強したと
いう実感を持てない美や作品自体と対話できない人も少なからず、即ち売れないとい
うのがこれまでの書道業界人、出版関係者の常。書が芸術と言い切れない1つの理由
がここある。美術や陶芸の世界でもオールカラーの美術本は少なくない時代になった
し、しっかりした作品集を持たずにプロを名乗って生きていけるこの書道界の実情は
この先何十年経っても今まで通りモノクロ印刷の世界、個人出版の概念から抜けられ
ないのかもしれない。
例外や特例を作り続けてきた私の考えでは、「無理」「できない」は、大概の場合、
心持とやる気の問題なのだ。
そんなこんなで大手経済誌が出版元となり、バーコード付の作品点数62点、計80
ページオールカラーという何とも贅沢な本に仕上がった。色校正3回という出版業界
でもあまり例がない徹底した色へのこだわり、一色の芸術である書というジャンル、
カラーになれていない書道界への自分なりのアンチテーゼ、書の新しい見せ方を模索
し続ける拘りと足掻きの表れなのか。