石橋湛山氏(東洋経済新報社・第5代主幹、第56代内閣総理大臣の写真の前にて)
企画から発売に至るまで構想3年、編集1年という長い歳月を要してしまった。
掲載する頁数の関係で、これまで世に発表した約1000点もの作品の中から先ず200
点、そして150点、100点と作品数をどんどん減らして行かなければならなかっ
た。作り出し落款印を押した作品の一点一点に物語と私の強い想いがあり、当時それ
を書いていた心境や状況などが鮮明にフラッシュバックし、いろいろと考え込んでし
まい作業が幾度も中断された。
「柿沼康二の中に何人の柿沼康二がいるのか」
書家仲間からもよく言われる。良い意
味でも悪い意味でも表現領域が広すぎ、とても同一人物が書いたと思えない表現、年
代や制作意図によってばらつきがあり、作品を減らしていくと同時に美術本一つ作品、
塊を形成していかなくてはならない。また、人か見ると同じように見える作品でも作
者である私の制作意図や狙いが天と地ほど違うものもある。一字書、大作、多字数と
いうTHEのつく書道本、ベタな区分けは避けたかった。
つづく