初号試写会が終わった後、北野監督に深々と頭を下げた。
この試写で映画「アキレスと亀」は完成、以後誰も手を加えられない。
この世にまた一つの芸術作品が誕生した。
全ては公開直前まで秘密裏に進められていた。
●2007年10月下旬
李闘士男さん(映画監督&秘密結社やんちゃな大人の会代表)絡みの共通の友人で、オフィス北野役員Iさんから打診。「映画撮るので協力を・・・」との事だったが、「協力って何?何?意味深!」って思った。
話を伺うと、超大作パフォーマンスを予定していて、そのまま映画のオープニングとのこと。ひぇ〜〜〜〜。それも数十メートルの題字だと、、、、びしゃーという墨の飛び散りが欲しいと、、、
Iさん、2007FIFAトヨタカップ決勝戦用作品「決戦(9x40m)」書き入れに参加、その様子を見て墨じゃなく絵の具で書けるかどうか、もっと大きい超大筆開発するかどうかも検討とのこと。しかし柿沼の超大筆は数百万だし、色は勘弁してください、、、、。
すると、監督は題字を4色で書き分けたいと。
早速北野監督直筆の絵コンテが5,6パターン送られてくる。
それを参考にしながら柿沼のデッサン50種類前後提出。監督がその中より3作品を選出。パフォーマンスは別として題字担当決定。感動&泣き&鳥肌&緊張!
●2008年に突入
Iさん「監督は毎日刻々考えが変わる」、
俺「私も一応ゲイジュツカ、とても理解できます」
超大作になった際のカメラ撮影(クレーンやスタジオなど)が可能か否か。
●2月下旬〜3月中旬
Yプロデューサー、Kアシスタントプロデューサーと打ち合わせ3回。
3月〜5月までの全スケジュールをキャンセルし、北野組の作業に全精力を集中させる。
題字だけでなく、ストーリーに関わってくる劇中題字5作品も手がけることになる。
エンドロールを予定では出演者のみ手がけることとなる。(いつもの事であるが私の仕事はだんだん増える。良し悪しはわからない、、、)
黒澤、溝口、ゴダールなどなど映画の巨匠達のエンドロールを片っ端から研究してみる。
スポンサー及び提供各社名まで映画全体を筆字でまとめたいと、またまた話が広がっていく。
気がつけば、当初予定されていた超大作揮毫ではなく、北野武監督映画に最高のおべべを着せなければならない、膨大な数の作品を精魂こめて一字一字揮毫していく書家としての闘いが始まった。
3月上旬に劇中題字5種類の下書き20種類前後を提出。
監督は何点か選出し「基本的に先生にお任せする」と。「別に読めなくてもいいよ。敢えてキャプション入れる事も考えているから、、、」って、かなりのバットジョーク。
Y氏、K氏「アーティスティックな方向ばかりじゃなく、読める方向も、、、」と。結局3種類ずつ5作品、計18点を提出することとなる。
このとき作家にとって提出作品のどれが選ばれても文句は言えないという危険を覚悟した。
また取引先の書道用品店の桐葉堂が書道協力という形でスポンサーになって頂いた。心より感謝致します。(書道界における書道業者の柿沼及び映画に対するスポンサリングは私は聞いたことがないので業界初と思われる)